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コーチング事例|年度方針づくりも経営方針発表会も冗談が言い合える会社

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コーチング事例|年度方針づくりも経営方針発表会も冗談が言い合える会社

コーチング事例|年度方針づくりも経営方針発表会も冗談が言い合える会社

2026/06/27

先日、私が組織開発のコーチングと健康経営・健康づくり、社外相談窓口を請け負っている会社の今年度の経営方針発表会が無事行われました。経営方針発表会に向けて4月から何度も経営陣と各部署の責任者とグループコーチングという形をとり、私がファシリテーターとなって方針、目標設定、アクションプランを考えてきました。そのプロセスで外部コーチの私が毎回感心していたのが、グループコーチングの場が心理的安全性(何を言っても傷つかない安心感)に留まらず社長もその部下たちも冗談を言ってもOKという関係性であるところです。なぜ大事な話をしているにもかかわらずそれが可能なのか。私なりに考えてみました。

 

 

ものづくり愛知の中小の製造会社

愛知県豊明市に本社を置く創業56年経つ金属製品などの製造販売を行う従業員数50名弱のA社。そこの社長には10年以上前から異業種交流会でお世話になり先輩・後輩の関係です。4年前に健康経営に取り組みたいということから健康経営アドバイザーと健康管理士などの資格を持つ私がコンサルティングに入ることになりました。健康経営の取り組みは東京で大手企業で勤めた後、A社に入社して約1年の社長の息子さんが担当者となって、社長と3人で取り組み内容を考え実践し、見事1年後にA社は健康経営優良法人に認定。今年で4年目を迎え、従業員・家族の受診・再検査の受診促進、朝・昼のラジオ体操、ウォーキング、年2回の社内健康セミナー、メンタルヘルス面談、さらに昨年度からはエンゲージメント調査も行うようになり、順調に進んでいます。

 

私が健康経営でA社に関わるようになって次年度を迎えようとする頃、2030年がA社の創業が60年の節目であることに気づいた私が「中期5カ年計画を作ってみませんか?」と社長に提案しました。長年の安定した顧客を抱える中小の製造会社は経営計画を立てることはほぼなく、このA社も作ったことはありませんでした。なのに私が提案した理由は、従業員のメンタルヘルス面談を健康経営を機に行なったところ、従業員から「うちの会社は目標がない」「この会社が将来どうなるのかわからない」という声を数人から聞いたからです。健康づくりの目標は作るのに、大事な事業目標がないのは従業員のエンゲージメントに関わることだと私は危機感を感じ、先の提案をしました。すると、社長は「5年後くらいにそろそろ息子に会社を任せようかな」と口にされました。そこで事業継承を5年かけてやっていくという意味から2025-2029の中期5カ年計画を作成することになりました。

 

 

トップのマネジメントスタイルと組織風土

よく「風通しのいい会社」「アットホームな会社」「軍隊のような組織」など組織風土や企業文化を言い表す言葉があります。これらはどこから生まれているのでしょうか。

 

会社組織には3つの慣性があるといいます。

 

業績のことばかり口にする経営者、あるいは従業員の失敗や弱点ばかり指摘する上司の場合、その部下は無意識に無謀なやり方で数字を取ろうとしたり、自分を守ろうと挑戦意欲がなくなったりします。

 

では、A社の社長はどうかというととにかくいつも変わらず明るく元気で、後輩の私に対しても社長の方から「最近もマラソンやってる?」と話題を振ってくれます。A社に平均月1回おじゃましていますが、しんどそうな表情も険しい表情も見たことがありません。従業員ともラフに仕事の話以上に世間話や個人的な話などをしゃべっていますし、社内健康セミナーで体力チェックや大縄跳びを従業員とやっているときなども女性従業員が「社長、それじゃだめじゃん」などタメ口でつっこんだりする場面も時々見かけます。それは社長が工場に毎日顔を出して世間話や一緒に工場で作業をしたり、従業員の様子を知る会話(子どもの話とか)をしているからです。豊明市の会社ということで従業員の多くがその近隣地域に住んでいるということも関係しているかもしれません。

 

ただ何でも話せる、いわゆるアットホームな会社がいいというわけではありません。会社組織は仲良しこよしの場ではなく、社会に貢献し利益を生まなければならないからであり、スポーツでいえば楽しむのではなく勝つことが目的とされるからです。職場のコミュニケションや従業員同士の関わり方によって風土がいろいろあり、下記のピラミッドのように安心があっても行動につながらなかったり、逆に安心がなくても行動につながる場合もあります。

 

軍隊型はいわゆるトップダウンもしくはプレッシャーをかけることで行動に促すというマネジメントスタイルであり、短期で成果を出せますがいまの時代には合っていません。一方井戸端会議型は心理的安全性が備わっている状態だけれど、A社のように計画や目標がない状態でベクトルがなく現状維持の状態です。なのでA社が中期5カ年計画と目標設定するのは息子さんを経営者に育てるのと合わせて従業員の能力を最大化し自信や行動を促進しようという狙いがあります。

 

 

中期5カ年の1年目の成果

5年後である2030年のありたい姿を社長はじめ経営陣、責任者と冗談を交えながら何度もセッションし、方針、スローガンなどを作り、バランススコアカードを基に戦略、評価指標、目標設定を行い、2025年度がスタート。先日の経営方針発表会で従業員に2025年度の結果を報告。売上は目標の10億を達成、さらに営業利益、経常利益ともに前年度の約5倍に増収しました。もちろん社外要因もありますが、従業員は目標を達成できたというのは今まで味わうことのない達成感を得ることができたのではないでしょうか。また増収した分を従業員に賞与などに還元、福利厚生にも充当するとのことです。

 

そして私も驚いたのですが、30代半ばの社長の息子さんと、その息子さんと同い年で新卒からたたき上げでがんばってきた営業社員が2人揃って取締役に就任しました。実際に2026年度の経営方針策定においてこの二人が積極的に考え、意見し、日常業務においてもアグレッシブな姿勢を見せていたと思われます。ただ変わらないのは経営陣も責任者もしっかり意見を言い合うがユーモアがあり、何でも言えるところです。なので私はファシリテーターでありながらも、「はい、私もアイデアあるよ」と手を挙げて答えると、「先生それいいねえ」と自分のアイデアが採用されたりもしました。

 

 

批判や否定をしないコミュニケーション

A社には副業を始めた社員がいます。それはその社員がやってみたいことがあり、土日休みにやれることです。もちろん、月曜日から日曜日まで休みなく働くということではなく、健康に配慮しながらやれる範囲で副業をやるということですが、その後押しをしているのが社長をはじめとする従業員のみなさんです。今後も副業に関しては時代の流れもあり少しずつ増えていくかと思われます。これは1つの例ですが、従業員のことを親身になり、仕事だけちゃんとやってくれればいいという考えではなく、プライベートのことまで気遣い、その従業員が気持ちよく仕事ができるように大事に思っているように私には映ります。

 

仕事のアイデアにしてもよほどのことがない限り、NOを言いません。社外の人間である私に対しても、何でも受け入れてやっていただけます。そんな度量の大きい社長でもこんなことがありました。最近社長と息子さんが仕事のことで大げんかになり息子さんが会社の壁に穴を開けたという話を聞き、私は頼もしく感じました。息子さんと4年前から一緒に健康経営に取り組み始めた頃は「社長になる気はあるんだろうか?」と正直少し気になっていました。が、その心配は無用で会社をよくしていくために父親である社長に対等にぶつかり合っています。これは中期5カ年計画によってやるべきことが見え、どうすればいいかを具体的に考えられるようになったのが大きいと思われます。社長と息子さんはタイプが違い、息子さんはどちらかというとクールなタイプだと思っていましたが、息子さんも本気で会社のことを考え、社長も何でもOKしているわけではなく、経営に関することは社長としての考えを貫いている表れだと思いました。

 

 

いまは私がA社の伴走をしていますが、いつか私の伴走なしで100年企業を目指して歩み続けていくことができる会社になっているのが楽しみであり、さみしくもありというところです。

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