機長の管理マネジメントから学ぶ人材育成
2022/06/24
ちょっとしたミスが重大な事故につながる例が飛行機事故です。交通事故より事故が起こる確率が低いとはいえ、多くの命を預かっている点や、アンコントロールな自然環境や機体の影響を大きく受ける点ではいかに早めに予期し適切な対応を取るかがカギとなります。飛行機のハンドルを握る機長はどのような訓練を受け、リスク回避に努めているのでしょう。
- ○ 飛行機事故の原因とクルーの行動
- ・飛行機事故の原因
- ・事故の要因となるクルーの行動
- ・情報受容、判断、操作・指示にミスが起こりがち
- ○ クルー育成の領域やその方法
- ・パフォーマンスを高めるために
- ・発見学習
- ○ 宇宙飛行士が語ったクルーに大事な共同体意識
飛行機事故の原因とクルーの行動
飛行機や電車、車などの乗り物に限らず仕事には何らかの危険やリスクが存在し、いかにミスや事故を回避するかが、いい商品やいいサービスを提供する以上に求められます。早稲田大学人間科学部の教授によると、「安全とは、その危険を的確に予測し、それが顕在化しないように常に注意を払い、その芽を1つ1つ丹念に摘み続ける努力をした結果、何も起こらなかったということ」と定義しています。つまり、どれだけ機械化・自動化が進んでもそれを扱う人がいかに高い意識を持って機械やチームクルー、関連する環境に注意を払わなければならないということです。
飛行機事故の原因
飛行機事故の原因を一番多いものから順番に挙げるとこうなります。
1位:基本的技術(ミスジャッジや間違った決定を含む) 45%
2位:基本的技術以外のコックピットクルーに要因があるもの) 35%
3位:外的環境要因 10%
4位:設備不良・構造的欠陥 10%
原因の8割はヒューマンエラーによるものです。テクノロジーがどれだけ進化しても、パイロットにいかに厳しい訓練を課しても、人間そのものの促成に起因する事故が起こることから、クルー・リソース・マネジメントが生まれました。
事故の要因となるクルーの行動
飛行機事故が起こった際のコックピットクルーの行動がどのようなものかが以下の通りです。
1)職務の責任と責任の分担が不適切だった
2)優先順位を論理的に確立できなかった
3)重要な景気やシステムの継続的なモニターとクロスチェックを怠った
4)問題を注意深く見極めず、小さなことに没頭してしまった
5)入手し得るあらゆるデータが利用できなかった
6)すべての方針や各人の意図の明確な意思疎通が疎かになった
7)機長がしっかりとしたリーダーシップを発揮しなかった
これらは私たちが仕事でミスをした際の行動と重なるものではないでしょうか。
情報受容、判断、操作・指示にミスが起こりがち
パイロットはどこでミスを冒してしまうのでしょう。ミスが起こるポイントは以下のものになります。
0)情報源/計器、機外情報、警報音、クルー助言、異常臭など
↓
1)情報受容/見間違い、聞き違い、見えず、聞こえず、見落とし、聞き落としなど
↓
2)判断/思い込み、自己流解釈、忘れ、安易、こだわり、遅れなど
↓
3)操作・指示/間違い、不適切、忘れ、ムリ又は過大な操作、困難や遅れ、力やテンポの狂いなど
最も多いミスは操作・指示で33.9%の比率です。皆さんも身に覚えはあるのではないでしょうか。
0)から3)までの流れを考えると、1)の情報受容の精度を高めれば、2)の判断も謝らないため、まずは情報受容の能力を高めることが重要になってきます。
<情報受容の能力を高めるために>
・どういう情報が欲しいのかについて、自分で問題意識を持つこと
・注意のメカニズムを理解すること
-ある対象物を正しくモニターできるのは約30分間
⇒インプットだけの作業は30分以内に抑える
-注意の外的要因は赤色、大きい看板、動いたり変化するものに目を引く
⇒それ以外にも目を向ける
-仕事の直前に事故例などを聞かされると、その点に関しては注意深くなる
⇒注意してほしいことを直前にミーティングして確認する
・錯覚の心理を理解しておくこと
-知識や経験が豊富になると、慣れによる注意力の低下や安易な判断を起こしやすくなる
-情報量がキャパを越えると、越えてしまった部分は無視あるいは隠されてしまう
クルー育成の領域やその方法
事故原因の8割を占めるヒューマンエラーをカバーするには、1つは最近の自動車に付いている衝突防止機能や踏み間違えといった誤発進抑制制御機能のような自動化と、もう1つは人間側のパフォーマンスを引き上げる方法です。
パフォーマンスを高めるために
クルー・リソース・マネジメントで行われる訓練は、コックピットにおいて利用可能なすべてのリソースを、最適な方法で最も有効に活用することにより、クルーのトータルパフォーマンスを高め、より安全で効率的な運航を実現することを目的としています。よって、そのための知識と具体的な方法を学びます。
この訓練の領域は大きく2つあります。1つは「クルーマネジメント」といい、チームメンバー全員のリソースを引き出し活用することによってトータル・パフォーマンスを高めるためのスキルの領域です。もう1つは「リソースマネジメント」といい、様々なリソースをいかに有効活用するかというメンバー個々の能力の領域です。
発見学習
高めるべき2つの領域をどうやって身に付けるのかというと、与えられる学習ではなく訓練を受ける者が自発的に学び取れる教材や雰囲気を作り上げていく主体型の学習スタイルです。
<主体型の学習スタイルの特徴>
・自発的、自律的
・発見学習
・自己啓発型
・相互啓発型
教官や講師が主導で行うスタイルではなく、受ける者が「なぜ?」「どうしたら?」と自ずと考えるコーチングとティーチングの融合スタイルが効果的のようです。
宇宙飛行士が語ったクルーに大事な共同体意識
国際宇宙ステーションの組み立てミッションに参加し、3度の船外活動をリーダーとして行うだけでなく、宇宙の素晴らしさや可能性をわかりやすくいろんな場で発信し続けていらっしゃる宇宙飛行士の野口聡一さん。先日お笑いコンビであるオードリーのラジオ番組にゲスト出演され、組織のチームづくりのヒントとなるお話がありましたので簡単にご紹介します。
3回飛行経験がある野口さんが2回目の飛行で半年間最大6人と過ごした話を聞いたオードリーの若林さんが「気が合わない人はいないんですか?」という素朴な疑問を投げたところ、「気が合うかどうかも大事」と野口さんは即答しました。それはどういうことかというと、宇宙という場所は死ぬ方法はいっぱいあるが、生きて帰る方法は1つ`全員協力して乗ってきた宇宙船で帰ること’である。宇宙は逃げ場がないので、全員が気の合う仲間ではないが2年間の訓練を通じてお互いの気心を知っているし、全員が同じ目的で協力しないと戻れないという共同体意識があるということでした。
それと、クルー同士のコミュニケーションについても野口さんはおっしゃっていました。一番ダメなのが短気なことだが、我慢もストレスになるのでヨーロッパのクルーのように気に食わないことがあればそれを表に出して言い合った後は握手し、翌日はケロッとして後腐れなく終われる方がいいと。日本だと気に食わないことがあっても表面化させないことで、コミュニケーションの齟齬が生まれたり感情で動いてしまうというパフォーマンスを低下させてしまいがちです。
自分のチームが宇宙船や飛行機に乗っているつもりで考えてみるのもいいかもしれませんね。そして人材育成もただ能力を高めるだけでなく、部下の気心を知る機会にしていくといいチームづくり、いい組織づくりにつながるのではないでしょうか。
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