研修事例|初心に立ち返る若手社員研修
2024/08/29
時代の変化、社会の変化に対応していこうと常々情報・知識を取り入れるようにしていますが、最近はインプットよりアウトプットする機会が多いのが実情です。そのため、最近行った研修で講師をしている私も新鮮な気持ちになった研修がありましたのでシェアさせていただきます。
今回実施した研修は、名古屋に本社を置く旅行・観光事業の会社で今まで講師を外注することなく専門職のスキルアップの研修を中心に内製化しておこなっていました。しかし入社2年目~6年目の若手社員は入社がコロナ禍直前もしくはその真っ只中で、入社し意欲がとても高い頃に現場に出て経験を積むことができず、ようやく昨年ごろから通常通り仕事ができるようになったものの、空白の期間を埋められていないんじゃないかという若手社員のマインド面を危惧した責任者から講師の依頼を受けました。
社員育成手法と使い分け
社員を育てる方法はOJT(On the Job Training)、集合研修、1on1ミーティングなどありますが、手法としては大きく2つに分類できます。
1)トレーニング(Training)…決められた通りに決まったやり方で仕事を遂行できるようになることが目的。教える⇔教えられる
2)コーチング(Coaching)…やり方が決まっていない事柄について主体的に考え目的を果たせるようになることが目的。問いかけ⇔考える
この2つは英語の語源を考えるとわかりやすいでしょう。トレーニングは列車のTrainが語源であり、レールに沿って走る、決められた通りにできるための学習です。もう1つのコーチングは馬車のCoachが語源であり、乗客が行きたい目的地・ゴールに行きたい道のりで且つ効率よく辿り着くように自由なプロセスで目的や目標を達成していく学習です。
<人を育てる指導者別役割・関わり方>
|
テーマ |
役割/関係性 |
テーマ解決方法 |
コーチ |
個人や組織の目標達成 |
話の聞き手/対等な関係、双方向の会話(コーチ⇔クライアント) |
対話を通じて望ましい答えやアイデアを探すための聴き手となる |
コンサルタント |
企業経営・専門分野 |
助言者/先生→クライアント |
診断と問題解決のための助言や指導 |
トレーナー |
職業能力・スキル習得 |
指導者/先生→生徒 |
専門的な技術や知識を教える |
メンター |
個人のキャリアアップ |
上司か先輩がメンター/上下関係 |
役割モデルを示し助言・指導を行う |
カウンセラー |
精神に支障をきたす悩みや問題 |
相談役/先生→患者 |
専門的知識を用いて方法を教える |
また、有識者が答えを教えたり授けたりするティーチング(上の図表のコーチ以外が該当)とコーチングは使い分けを知った上で社員育成に取り入れていくと効果的な能力開発が期待できます。例えば今回の研修に当てはめて考えると、受講者は経験が浅い[高い専門スキルを有さない]×接客のスキル・マインドを高める[リスクが高くない職務]という下図の左下領域であり、ティーチングとコーチングを組み合わせた育成が望ましいです。
<能力と職務のレベル別育成アプローチ>
先方の責任者は今までスキル習得・スキルアップを目的としたティーチング型の研修をやってきたものの、それだけでは限界があると感じていたようです。ということで、コロナ禍で経験と意欲が低下していたところをいかにスイッチをONに入れていくかが今回の研修のカギとなりました。
コーチング型の研修スタイル
事前に責任者と研修内容を打合せし、数か所の営業所の若手社員が集まることから異なる営業所の人とグループを作り、ディスカッションをできるだけ多くすることを決め、コーチングフロー(視点を変える質問)を軸にした流れで参加型スタイルの研修を進めていきました。
研修会場には受講する若手社員や責任者の他、人事部、さらに役員がオブザーバーでいらしたのと、接客にたずさわる専門職ということでとても礼儀が正しく座っている姿勢もかしこまった、言葉を言い換えると窮屈さが感じられる雰囲気がありました。しかし、研修参加のルール(例:自由に発言、批判・否定しない)や正解はなく、いろんな意見や自分と異なる考えを聞くことが気づきや学びにつながることを説明したことが研修での心理的安全性を担保することができたようで、最初のペアディスカッションから20代らしい素に近い姿で意見を交わすことができました。
途中で10分間休憩を挟んだところ、椅子に座らずいろんな人と会話をしに行っている様子、ある程度の関係性があることが見られたので、急遽その場の私の思い付きで「お互いに褒め合う」というコミュニケーションゲームを行い、そこから自分の強みを考えることにつなげていくことができました。
コーチング型の研修効果
終了後、アンケートで振り返りをしてもらったところ以下の通りでした。
・初心を思い出した
・今の自分の状況をしっかり考えられた
・自分の仕事に対しての見方が変わった
・自分の考えを話したり書くことで気づけた
・マイナス思考だったが前向きな気持ちになった
・自分自身を理解できた
・今の仕事をより好きになった
研修で若手社員に何が起こったのかというと、コルブの学習経験モデルの②と③です。
内省するには問いが必要で、1on1ミーティングならば上司との対話の中でこのモデルで行動と成長を促すことができるでしょうし、研修ならば講師からの問いを受講者・グループ同士で共有し、それぞれの経験をシェアすることで今までとは異なる視点・視野・視座を手に入れることができます。
入社3年以内の人の離職率が高いことは皆さんもご存じかと思います。若手社員にスキルや能力を身に付けさせて早く1人前に仕事ができるようにとトレーニングやティーチングが中心になりがちですが、ティーチングだけでなくコーチング(集合研修もしくは1on1)も組み合わせて意欲→行動→成長を支援する人材育成をお試しください。
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