企業視察|踊る町工場『能作』の見学報告
2023/11/29
富山県高岡市にある真鍮(しんちゅう)や錫(すず)を使ったベルや風鈴、花瓶などを作っているものづくりの会社 株式会社 能作(以後 能作)に訪問し、工場見学をしてきました。中小企業の経営や事業戦略を考えるヒントになるかと思いますので、どんな会社かをシェアさせていただきます。
能作ってどんな会社?
まず私が能作を知ったのはよく通う図書館でたまたま目に入り、踊る大捜査線ならぬ『踊る町工場』ってどんな工場なんだろう?と気になり本を借りたところからです。私は富山県の高岡市は富山マラソンに出場した際にコース途中で大きな大仏(高岡大仏)を見てその印象しかなかったのですが、元々鋳物の町とのこと。1916年創業で現会長である能作克治さんが本を書かれました。①高岡銅器の伝統技術の継承と多くの人に知ってもらいたい、②下請けだけではなくBtoCで消費者のニーズに応えたい、③町に貢献したい という想いから伝統にあぐらをかくことなく、町工場としては稀なワクワクする挑戦をされている会社です。
能作のホームページを見ればわかりますが、工場見学を1つの事業(産業観光)と位置づけており、誰でも見学することができます。本を読んで一度訪問してみたいと思っていたところ、たまたま別の仕事で隣の石川県の金沢に行く機会があったので、1泊して高岡まで足を運ぶことにしました。もちろん、ホームページの工場見学の予約ホームから事前予約してです。13時までの枠は埋まっていたため14時の回で見学させてもらうことになりました。
産業観光の機能を持つ社屋
高岡は北陸新幹線「新高岡」駅がありますが、私は金沢から在来線で高岡駅へ。そこからバスで行くこともできるようですが1時間に1本のためタクシーで20分かけて向かいました。車窓から見える風景は360度遠くまで見渡せるほどの平野でしたが、能作があるオフィスパークという会社や工場が立ち並ぶエリアだけは趣が変わりました。関係者以外は立ち入らない無機質なエリアの中で唯一といっても過言ではなく、都会のど真ん中にあっても見劣りしない洗練されたデザインの建物がありました。そこが能作でした。
中に入ると
・富山県の観光情報
・ファクトリーショップ
・カフェ
・体験工房
・木型倉庫と技術紹介
があり、工場や本社事務所は関係者以外立ち入り禁止となっています。
私はまずカフェでランチをいただき、ショップでどんな商品があるのかじっくり見ていると予約した工場見学の時間になり、その禁止エリアに入るのですが、その前に産業観光課の女性が展示されている木型倉庫や技術紹介を見せながら、高岡銅器の歴史やどのような工程で作っているのかを説明してくれました。工場の手前で骨伝導のヘッドセットを付けて実際の作業場に入り、作業の邪魔にならないように白線から出ないように注意しながら女性に促されるまま奥へ進んでいきました。実際に作業をしていた社員と話すことはなく、社員は私たちのことにかまうことなく黙々と作業に集中しながら仕事をしていました。見学時間は最初の説明を含めて約30分とさほど長くはありませんでしたが、十分満足できました。また、工場見学だけでなくショップの横にある体験工房では学校の先生に引率されてきている小学生だったり別の時間帯には主婦の集まりが何かを作っていました。
技術だけではない能作の強み
現会長の著書『踊る町工場』には経営理念や事業方針、教育方針などが書かれていましたが、
①社員教育をしない
②同業他社と戦わない
③あえて計画を立てない
そして
・思いやりとやさしさを持つ
というのが軸になっていると思われます。
①社員教育をしない
会長の教育方針には教育とは教えることではなく気づかせることというのがあります。ルーティンワークはマニュアル化できても、仕事との向き合い方や職人としての誇り、能作の社員としての自覚といった人としてのあり方は自分で気づくものということです。私も同感ですし、コーチングはまさにティーチングではなく気づきを促すアプローチであります。また教えてくれる人がいると
教えられる側は自分で考えることをしなくなります。そういったことから会長は教える人がいない方が早く育つと述べています。
②同業他社と戦わない
地域の同業他社と戦わず共存共栄し、伝統や地域のすばらしさをとくに子どもたちに知ってもらいたいという想いが能作にあります。それが1つの事業となっている産業観光事業であり、富山市と金沢市の中間に位置する高岡に、そして駅からのアクセスがよくなくてもわざわざタクシーで足を運んだり観光バスで団体で見学に来るほどになっています。
③あえて計画を立てない
計画を立てた方が実行する確率が上がるように思いますが、おそらく計画を立てるとTo doがやらなければならないことになってくるし、今の時代は目まぐるしく変わる状況にスピード感を持って対応していかなければいけません。そうすると「いまこれをやったほうがいい」「あれをやりたい」という思うことを重視した方がやりたいことを全部やることができるということです。
私はずっと企業の目標達成や社員の成長支援に携わっており、時に社員研修を行うこともあるため、「教育しない」という選択肢は全く持っていませんでした。そんな1つの選択肢が増えたこと、私の社員育成に関する思い込みを取っ払ってくれた能作に感謝しています。もちろん、社員研修をサービスの1つとして今まで通り行っていきますが、企業によっては能作のやり方がマッチする会社もあるでしょうから、社員育成を携わる際はそんな選択肢も含めて企業さまと対話しながらどんなやり方が社員の成長を促進するかを考えるお手伝いをしていきます。
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