健康経営|他の経営課題の改善・解決へ ②ワーク・エンゲージメント
2023/10/02
健康経営エキスパートアドバイザーとして9回に亘って健康経営が企業の抱える他の経営課題の改善・解決につながる視点をご紹介していく2回目はワーク・エンゲージメントです。
国連による持続可能な開発目標では「3.全ての人に健康と福祉を」「8.働きがいも経済成長も」に見られるように、健康、働きがい、経済成長は世界共通の開発目標に位置づけられています。また、世界保健機関(WHO)は、2017年の世界メンタルヘルスデーのテーマとして「職場のメンタルヘルス」を取り上げ、経営者や管理職は、健康の増進と生産性の向上に関する必要があると述べています。
日本では、経営戦略の一部として従業員の健康支援に取り組む動きが加速していますし、働き方改革に見られるような新しい働き方を模索する動きも始まっています。これらの変化は、心身の不調への対応やその予防にとどまらず、組織や個人の活性化を視野に入れた対策を行うことが、広い意味での従業員の「健康」を支援する上で重要になってきたことを意味します。
このような流れを受け2000年前後から、心理学および産業保健心理学の領域でも、人間の有する強みやパフォーマンスなどポジティブな要因にも注目する動きが出始めました。このような動きの中で新しく提唱された考え方(概念)の1つが、ワーク・エンゲージメントです。
ワーク・エンゲージメントとは?
活力、熱意、没頭の3つが揃った状態はバーンアウト(燃え尽き)の対概念として位置づけられています。バーンアウトした従業員は、疲弊し仕事への熱意が低下しているのに対して、ワーク・エンゲージメントの高い従業員は、心身の健康が良好で、生産性も高いことがわかっています。
これまでの研究から、ワーク・エンゲージメントと健康、仕事・組織に対する態度、パフォーマンスなどとのポジティブな関連性があることがわかりました。
<ワーク・エンゲージメントが高い人の共通点>
・健康に関して、心身の健康が良好で睡眠の質が高い
・仕事・組織に対する態度において、職務満足感や組織への愛着が高く、離転職の意思や疾病休業の頻度が低い
・パフォーマンスでは、自己啓発学習への動機付けや創造性が高く、役割行動や役割以外の行動を積極的に行い、部下への適切なリーダーシップ行動が多い
ワーク・エンゲージメントを高めるには
組織ができる工夫と従業員個人ができる工夫とに整理することができます。組織ができる工夫では、従業員の「外的資源」、つまり職場内の仕事の資源を増やすことで、従業員一人ひとりの、さらには組織全体のワーク・エンゲージメントを高めることを狙いとしています。これに対して従業員個人ができる工夫では、一人ひとりが「内的資源」、つまり個人の資源(心理的資源)を強化することで、ワーク・エンゲージメントを高めることを狙いとしています。
これらの活動をスムーズに展開するには、関係者が共通の目標と考え方の枠組みを持つことが重要です。共通する枠組みの1つに、ワークエンゲージメントを鍵概念とする「仕事の要求度ー資源モデル」が挙げられます。
従来のメンタルヘルス対策では、健康障害プロセスに注目し、仕事の要求度によって生じたストレス反応(バーンアウト)を低減させ、健康障害を防ぐことに専念していました。しかし、イキイキとした職場づくりでは、2つのプロセスの出発点である「仕事の要求度」の低減と「仕事の資源」の向上に注目します。このうち、仕事の資源は、ワーク・エンゲージメントの向上だけでなく、ストレス反応(バーンアウト)の低減にもつながることから、仕事の資源の充実と強化が、イキイキとした職場づくり、ひいては健康経営にとって重要になります。
組織ができる工夫
1.管理監督者における工夫
管理監督者研修では、研修で取り上げられる知識とスキルが、精神的に不調となった部下への対応だけでなく、それ以外の従業員の活性化や健康職場の実現にも効果的であることを強調することが必要です。また、人事部門が行なっているマネジメント研修やリーダーシップ研修では、部下の活性化を通じて、メンタルヘルスの向上にも役立つことが知られていることから、産業保健とも連携しながら、メンタルヘルスの視点を盛り込むことが望まれます。
2.職場環境改善における工夫
精神的不調の第一次予防を主な目的としたストレスチェックについて、従来の職場環境改善の考え方を発展させ、従業員のワーク・エンゲージメントを促す仕事の資源もストレスチェックの検討項目に加え、仕事の資源の増強を図る活動も同時に行うなど戦略的に活用しながら組織の活性化を図ることが望まれます。
従業員個人ができる工夫
1.自己効力感の向上
自己効力感は仕事への自信であり、ワーク・エンゲージメントを高める個人の資源に影響を与えるものです。ストレスに対処するためのスキルだけではなく、仕事を上手に進めるためのスキルにも注目することが必要です。例えば、タイムマネジメントスキル、人間関係を円滑するためのコミュニケーションスキル、問題解決スキル、目標達成スキルなどです。
2.ジョブ・クラフティング
作業効率を維持したまま従業員の動機づけを保つにはどうすればいいのかという問題意識から注目されるようになった考え方がジョブ・クラフティングであり、課題や対人関係における従業員個人の物理的ないし認知的変化と定義され、要は従業員が自らの仕事を変化させながら、仕事の意義を高めていく主体的なプロセスといえます。
仕事のやりがいや意義は、ワーク・エンゲージメントを高める重要な仕事の資源です。現在、国内外では仕事のやりがいを高めるジョブ・クラフティングの研修プログラムが開発され、その効果や評価の研究が行われています。これからの職場のメンタルヘルスでは、産業保健と経営が強調しながら従業員の活力を高め、一人ひとりの健康度・生産性と組織全体の生産性の向上につなげる多面的な視点が重要となります。
メンタルヘルス研修とコーチング(内省し主体的な行動を促す対話)研修を両方扱っています。従業員のストレスレベルが高いとかワーク・エンゲージメントが低いと思われる企業さまはお気軽に弊社にご相談ください。
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