健康経営|他の経営課題の改善・解決へ ①働き方改革
2023/09/25
健康経営エキスパートアドバイザーとして今回から9回に亘って健康経営が企業の抱える他の経営課題の改善・解決につながる視点をご紹介していきます。
①働き方改革
②ワーク・エンゲージメント
③ウェルビーイング
④ナッジ
⑤パーパス経営
⑥SDGsとサスティナブル経営
⑦食育
⑧心理的安全性
⑨コミュニケーション促進
初回の今回は①働き方改革との関連性、シナジーです。
働き方改革は、長時間労働の税制や柔軟な働き方の実現による心理的負荷への影響などを通して、健康経営と深く関わる経営課題の1つです。コロナ禍により目に見えて変わった働き方がテレワーク、時差出勤、オンラインミーティングなどです。業種・職種によってテレワークができない人も含めて働き方に大きな影響を与えています。さらにコミュニケーションの取り方やマネジメントの在り方なども大きな変化を職場にもたらしています。では、働き方の変化が健康経営の取り組みとどのように関係しているのでしょうか。
職場での健康状況
厚生労働省が公表している「過労死等の労災補償状況」の経年での変化についてみていきます。「過労死等」というのは「働き方」の問題の最悪の帰結といえるものですので、組織として大きなリスクをみていく必要があります。今世紀に入ってから長時間労働を主な認定基準とする「脳・心臓疾患」についての請求件数は、2000年代前半まで増加傾向が続いた後は2010年にかけてやや減少し、その後横ばいとなっていますが、比較的高水準で推移しています。2020年度で減少したのはコロナ禍によるテレワーク等の導入が影響していることが考えられます。
コロナ禍による働き方の大きな変化
テレワークの普及は、オンラインのコミュニケーションツールを活用して感染予防を徹底しながら業務を止めないことに大いに貢献しました。また通勤時間の削減や働く場所の制約がなくなることなどによりワークライフバランスが向上し、働く人の健康の向上につながるものといえます。さらには、雑用や突発対応などの減少、「場」にいることで発生する煩雑なコミュニケーションからの解放による心理的なストレスの改善などの効用も指摘されています。
一方で、対面でのコミュニケーションの減少による孤立感や孤独感を抱える人の増加、いつまでもどこでも仕事ができる環境となったことによる過重労働のリスクの高まりも指摘されています。また「場」を共有しないことにより、これらのリスクが潜在し発見することが難しくなってきていることも問題といえます。身体面を見ると、通勤やオフィスでの勤務に伴い必然的に発生していた身体運動が減少し、座位時間が大幅に増え運動不足となっていること、それに伴う肩こりや腰痛などの運動器疼痛の増加、日中の活動水準が低いことによる睡眠の乱れなどの問題も指摘されています。
<テレワークの主なメリット・デメリット>
●メリット
・生活習慣を見直すきっかけに
・職場での過剰なコミュニケーションがなくなりストレス低減
・雑務や横やりが入りにくい作業に集中しやすい
・オンライン活用により、場所に縛られず柔軟なやりとりが可能に
・通勤時間削減により自由時間が増加、家事や育児等との両立がしやすい
●デメリット
・在宅で座位中心の生活による運動不足、腰痛や肩こり
・孤立、孤独によりストレス悪化
・業務内容の不明確化、周囲との調整が困難
・コミュニケーションの質・量ともに低下、雑談の機会が得られにくい
・労務管理の難しさ、私生活と仕事の境界が曖昧
働き方改革と健康の関係
上記のように「働き方」が健康に関係していることは明らかで、「仕事と仕事以外のバランスがとれている」すなわちワークライフバランスが取れていると企業は「心の病」が減少傾向にあります。また、「長時間労働対策の成果が上がっている」企業も「場所に縛られない働き方改革の成果が上がっている」企業も「心の病」が減少傾向が多いという公益財団法人日本生産性本部の企業調査報告(2021年)があります。
このことから「心の病」の減少に成功している企業では、働き方改革の成果が上がっているところが多いことがわかります。また、長時間労働対策よりもワークライフバランス施策や場所にとらわれない働き方改革の施策の方が顕著に効果が出ているようです。
働き方改革と健康経営をつなげるポイント
「働き方改革」をうまく機能させ、多様で柔軟な働き方を実現して生産性を高めるとともに、働く人の健康にも寄与するものとするにはどのような点に注意を払えばよいのでしょうか。
まずは「改革」などの大きな変化にはストレスがつきものであるという認識を共有することが挙げられます。特に「働き方改革」ともなると長年身につけてきた習慣を大きく変化させる必要があり、その分大きなストレスを感じる人がいるものです。長時間労働の削減のような誰の目にも良い取り組みであるように見えることであっても、「納得いくまで仕事ができない」ということでストレスを抱えたり、やる気がそがれたりしてしまう人が一定数出てきます。このような人にも目を向けて全員を対象とした取り組みとしていくことが大切になります。
続いて「改革」にはプラスマイナスの両面があり、マイナス面については積極t系にケアしていくことにも注意が必要です。典型的なものとして、テレワークで働く時間と場所が柔軟になったことにより、プライベートと仕事の切れ目がなくなり、かえってワークライフバランスに支障をきたし、長時間労働となる例などがあります。これには勤務時間の機械的な把握などの施策も併せて実施することで対処が可能と考えられます。「改革」がもたらす結果について客観的に検討して、マイナス面をケアしつつ、プラス面の効能を高めていくことが求められます。
次に「働き方改革」を一方的に自律性を求める押し付けのものとせず、「働きやすさ改革」とするという視点を持つことです。多様で柔軟な働き方の実現は、自律的に働ける人にとっては裁量が増し働きやすくなる取り組みといえますが、経験が少なくなったり、指示を受けて業務に取り組む役割を担っていたりする人にとっては、困惑を生む可能性があります。適切な能力開発やコミュニケーションの機会を設定することなどにより、みんなの働きやすさが増すような取り組みとして推進していくことが、中長期的な成功につなげるためにも重要となります。
また、多様性や柔軟性のある働き方は、得てして社員の組織への帰属意識やメンバーシップを薄めてしまうものであることにも注意が必要です。従業員のためを考えた取り組みが、遠心力となってしまわないためにも、組織のパーパスなど共有できるものをしっかりと一人ひとりに浸透させ、場所や時間が離れていても皆同じ目的に向かって行なっているという感覚を持てるようにすることが大切です。この施策は従業員間に物理的な距離があっても独りではないと感じてもらう意味でも重要で、孤立や孤独というメンタルヘルス面の対策としても有効なものとなります。
最後に、最も重要なことは経営者が「働き方改革」を社員のウェルビーイング、健康のために取り組む施策であると明確に位置づけ、そのことを絶え間なく発信し、浸透させていくことです。せっかくの「働き方改革」の取り組みも、「超過勤務費用削減のため」「いつでもどこでも働かせるための働かせ方改革だ」「法対応のため仕方なくやっている」などと曲解されてしまうと、社員の協力を得られず形骸化してしまいます。経営者が率先して自分たちのために取り組みを進めているのだと、それぞれの従業員が腹落ちしてこそ、自律的に多様な選択肢から状況に応じた柔軟な働き方を選択する真の「働き方改革」が実現し、新しい時代の働き方へと変わっていくことになるでしょう。
社員のための働き方改革を本気でやっていきたいとお考えの経営者や健康経営担当者は弊社にご相談ください。
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