健康増進と生産性向上につながる行動と環境改善のPDCAサイクル
2021/01/29
健康経営の施策として職場環境を整備するときは、健康の保持・増進と生産性を向上する「7つの行動」を促します。
7つの行動は、それぞれ特定の健康課題と関連があり、その職場・企業において解決したい課題に合わせ、課題解決に効果のある行動を促すよう環境を整えることが重要です。
具体的な環境改善にあたっては、PDCAサイクルを回す継続的な活動として時間軸を考慮して、かつ関連する部門が協力して取り組むことが必要です。
7つの行動を中心とした活動の前提には、従業員の安全性や快適性を守るための労働安全衛生にかかる様々な環境基準やガイドラインも併せて満たすように配慮することが大切です。
- ○ 健康を保持増進する7つの行動
- ・1.快適性を感じる
- ・2.コミュニケーションする
- ・3.休憩・気分転換する
- ・4.体を動かす
- ・5.適切な食行動をとる
- ・6.清潔にする
- ・7.健康意識を高める
- ○ 職場環境改善の進め方
- ・P(計画)
- ・D(実施)
- ・C(検証)
- ・A(改善)
- ○ 関連法規
- ・事務所衛生基準規則
- ・VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン
健康を保持増進する7つの行動
健康経営の施策としての職場環境の整備は、その職場で働く従業員全体に直接働きかけることができる有効な方策です。
環境の整備によって、健康を保持増進するよい行動を自然と誘発することができれば、健康意識の個人差によらず、行動変容を促すことも可能です。
経済産業省が全国のビジネスパーソン約2万人を対象にした調査の結果、職場における健康を保持・増進する行動は以下の7つに大別でき、各行動は特定の健康課題と関連があることがわかっています。
7つの行動は、働き方改革や人事制度などの制度・ルールの「運用」、ICT・インフラ等の「情報」、照明・空調等の「設備」、家具・レイアウト・内装等の「空間」といった4つのオフィス環境から誘発されています。
また、これらの行動は、関連する健康課題の予防・改善を通じて、働く人のパフォーマンス向上にもつながります。
1.快適性を感じる
職場で快適性を感じながら仕事をすることは、運動器・感覚器、メンタルヘルス不調、ストレス性内科疾患の予防・改善につながります。
周囲の人との距離感を適切に感じられるようなスペースを確保した上で、体格に合わせて調節できる什器や設備を整え、最高、換気、植栽などにも工夫して、五感で快適性を感じられるようにするといいです。
☑自分の体に合わせて椅子の機能を調節している
☑室温が快適である
☑作業面が十分に明るい
☑タバコや強い香水など不快な臭いを感じない
☑自分の居場所が確保されていると感じる
2.コミュニケーションする
業務上必要なものだけでなく、挨拶、笑う、感謝するといったインフォーマルなものも含めて、適切にコミュニケーションすることは、メンタルヘルス不調、ストレス性内科疾患の予防・改善につながります。
仕事にも食事や休憩にも使えるカフェなどを設けるほか、同僚の仕事内容や人となりを理解するための情報掲示板やデジタルサイネージを活用する、部署や職位を横断したメンバーで行う掃除など、設備や運用も工夫するといいです。
☑雰囲気が友好的である
☑周囲の人の仕事の内容を把握している
☑いつも挨拶をしている
☑よく笑う機会がある
3.休憩・気分転換する
昼休みなどの決まった休憩をきちんと取ったり、整理整頓などの作業で気分転換を計ったりすることは、ストレス性内科疾患の予防・改善につながります。
その後の作業効率を高めるためにも昼寝・マッサージなどを取り入れて、積極的に疲労を回復するといいです。
また、時々雑談する、少しの間離席するなどの行動をためらわないような環境や雰囲気づくりも心がけたいものです。
☑仕事の合間に雑談することがある
☑仕事の合間に机や身の回りの整理整頓をすることがある
☑昼休みは規定通りしっかり休んでいる
☑離席するのに周囲の人に気を使わない
4.体を動かす
長時間の連続座位を避け、歩いたり階段を利用したりして仕事中に体を動かすことは、運動器・感覚器障害と生活習慣病の予防・改善につながります。
デスクワークや打ち合わせを立って行えるような家具を導入したり、自然と歩数が増えるように通路やプリンターなどの配置を工夫したりするほか、休憩のついでに軽い体操やストレッチができるような場所を設けるのもおすすめです。
☑オフィス内をよく歩いている
☑ラジオ体操など体を動かす工夫をしている
5.適切な食行動をとる
できるだけ体によい飲み物や食べ物を適度な間隔でとることは、生活習慣病の予防・改善につながります。
職場で提供するメニューは、健康意識を向上させるように、内容とともに情報提供にも工夫をするといいです。
また、食事の間隔を空け過ぎないように、コミュニケーションや休憩を兼ねて、適量の間食をとれるような場所も考えましょう。
☑仕事中に間食を時々摂っている
6.清潔にする
快適で衛生的な職場にするために、まずは分煙をしたうえで、身の回りを掃除したり、手洗い・うがいをきちんとすることは、感染症・アレルギー予防・改善につながります。
出入り口やトレイには、衛生用品を常備し、清潔を保つための行動を呼びかける情報も提示しましょう。
☑手洗い、うがいをしている
7.健康意識を高める
健康意識を高めることは、健康づくりの基本です。
職場においても、日常的に健康情報に触れられるように情報提示・配信などの仕方を工夫しましょう。
また、健診以外でも自分の健康状態を確認できるよう、休憩スペース等に測定機器を置くのもいいかもしれません。
☑自分の健康状態をチェックしている
職場環境改善の進め方
従業員が健康でイキイキと働ける職場環境を構築していくうえで、会社はお金や設備、人材など限られたリソースによって改善を図らなければいけません。
より効率的に職場環境改善を進めていくためには、解決すべき課題を特定し、必要な解決策を見極めて施策を展開することが重要です。
また、他の健康経営施策と同様に、職場環境改善も施策の実行だけにとどまらず、その後の検証や改善を含むPDCAサイクルとして継続的に活動を続けることが重要です。
以下に、健康経営の視点での職場環境改善活動の進め方を例示します。
P(計画)
・健康保険組合や人事部門と連携し、レセプトや健康診断などのデータをもとに、
改善を行う職場環境で働く人の健康課題を把握する
・従業員を対象にアンケート等を実施し、職場内での現状の働き方を把握する
・上記の調査をもとに、重点的に対策すべき健康課題とそのために目指すべき
働き方(行動)を決定する
D(実施)
・健康課題を解決する働き方(行動)を促すための改善策を実施する
・ハード的な職場環境の改善にとどまらず、従業員が自発的に働き方を変える
意識を持つように、セミナーや広報誌、掲示板などを活用して改善の意図や
健康上の効果などを伝える
C(検証)
・実施前に行った調査と同様の調査を改善後にも行い、前後比較から施策の
効果を検証する。短期的には、アンケートなどで働き方の調査を行い、
働き方(行動)の変化を確認する。日常の働き方(行動)が変化した上で
中長期的には健康状態がどう変化したのかを確認する
A(改善)
・検証結果を確認し、効果が低い施策についてはその原因を考察し、
さらなる改善を行う
職場環境の改善活動を実施していくには、人事部門や健康保険組合だけでなく、レイアウト変更や工事・内装施工などを行う際にファシリティを管理する総務部門の協力も必要となります。実施にあたっては事前に社内の関連部門と活動の目的や進め方を共有し、コミュニケーションを図りながら施策を推し進めていきます。
関連法規
上記の健康保持増進する7つの行動を促す職場環境づくりを目指すとともに、従業員の安全性や快適性を守るため、労働安全衛生に関わる環境基準やガイドラインも併せて満たすように配慮する必要があります。
事務所衛生基準規則
厚生労働省が労働安全衛生法に基づいて定めた事務所の衛生基準です。
事務作業に従事する労働者が主として使用するものについて適用されます。
気積を10立方メートル/人以上とすることや、精密な作業を行う場合は照明の照度を300ルクス以上とすることなど、環境管理(気積、換気、湿度、照度など)、清潔、休養、救急用具についての基準が定められています。
VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン
IT化によりVDT(Visual Display Terminals)が職場に広く導入されたことで、厚生労働省がVDT作業による心身の負担を軽減するために定められたガイドラインです(2002年策定)。
ディスプレイはその画面の上端が目の高さとほぼ同じか、やや下になる高さにすることや、一連続作業時間は1時間を超えないようにするなど、作業環境の管理(照明、グレア、騒音など)や作業管理(作業時間、機器など)についてのガイドラインが定められています。
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コーチングサプリ
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