「女性の働きやすさ、日本は29カ国中27位」をクリティカルシンキング
2024/03/08
毎日新聞のネット記事に、8日の「国際女性デー」を前に、英誌エコノミストが経済協力開発機構(OECD)に加盟する38カ国のうち29カ国を対象に行なった2023年の国別「女性の働きやすさ」のランキングが掲載されていました。そのランキングでは日本は22年よりも一つ順位を上げたが、29カ国中27位にとどまったとありました。
項目別で見ると、
・女性管理職の割合では、日本は14・6%と最下位。(この項目のトップに立つチェコは管理職の46%を女性が占める)
・女性役員の割合(OECD平均33%)は、日本が18%で下から3位
・性別の平均賃金を比べると、日本の女性は男性よりも21・3%少なく、下から3位
この結果を受け同誌は「北欧諸国がいつも上位に並ぶが、下位の国も見慣れた顔ぶれだ」と分析。「韓国や日本、トルコの女性は依然として職場で大きな障害に直面している」と評価しました。
みなさんは、この結果を見てどう感じましたか?
2015年公布、施行された女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(いわゆる女性活躍推進法)を機にいろんな所で「女性活躍」が叫ばれていますが、私の中でずっとモヤモヤしたものがあります。そのモヤモヤとは一体何かをクリティカルシンキング的に考えてみたいと思います。
※参考文献:佐々木裕子 著「実践型クリティカルシンキング」
クリティカルシンキングとは
クリティカル(critical)は英語で「批判的な」「危機的な」という意味を持つ言葉ですが、ビジネスシーンでは「深刻な問題」「危機的な問題」の意味で用いられています。
また、○○シンキングといえばロジカルシンキングがすぐに出てくる人が多いかと思いますが、これは言葉通り論理的思考法であり一貫して筋が通っている考え方やその説明の仕方のことです。ロジカルシンキングは、物事を構造的に説明するには有効とされていますが、今のような絶対的な正解のない時代では論理的に考えるだけでは結果が出ません。
それに対してクリティカルシンキングは、自ら目指すものを設定し、その目標を戦略的に達成していくことが求められ、そのための思考技術のことです。つまりツールであり道具、手段、考え方ということです。
クリティカルシンキングの基本
目指すものを達成するためのツールのため、
1)常にチェックする3つのこと
①目指すものとは何か?(いつまでに、どのくらいのレベルまで?)
②今と目指す姿のギャップは?(課題は?障害となっているものは?)
③ギャップを埋めるための具体的な施策は何か?(アクションプランは?)
2)クリティカルシンキングに必要な力
①目指すものを定義する力
②ズームイン・ズームアウトする力
3)クリティカルシンキングに必要な質問
①なんで?
②ホント?
③具体的には?
を踏まえておきましょう。
以上のことは、実はコーチングを行う際の大事なポイントでもあります。コーチングはコミュニケーションスキルと捉えている人が少なくないかもしれませんが、クリティカルシンキングと同様に目標を達成するためのツールですので、コーチの質問はクライアントにクリティカルシンキングと導き出したアクションプランの実行を促しています。
女性活躍推進をクリティカルシンキングしてみる
冒頭のランキングにある日本のランキングが最下位の「女性管理職の割合」について、大企業を中心に各企業が女性活躍推進に取り組んでいます。しかしながら、なかなか数字に表れてきていません。女性活躍推進に取り組んでいるのにうまくいかない会社のケースについて考えてみるために、一体何が原因なのかをクリティカルシンキングで考えてみたいと思います。
クリティカルシンキングは漏れなくダブりなく考えるために有効なフレームワークも活用したりします。今回組織戦略で用いられる7Sというフレームワークを使うとこんな感じになります。
<フレームワーク 7S>
①Shared Valye 共有価値観 →多様性の追求に皆が納得していない
②Strategy 戦略 →女性管理職登用と事業戦略は結びついていない
③Skill 組織能力 →女性管理職育成のノウハウがない
④Structure 組織構造 →組織体制としてダイバーシティ推進を担う部署がない
⑤System 運用システム →業績評価や両立支援制度は多様性を許容できていない
⑥Staff 人材 →社内に優秀な女性はいても管理職に前向きな女性がいない
⑦Style 社風・企業文化 →未だ男社会の社内で女性はやりづらさを感じている
とくに①共有価値観においては、女性活躍ってどのような状態になるのが女性活躍といえるのか?という目指すゴール(1)①がアバウトのことがよくあります。また、なぜ女性が活躍しないといけないのか?という理由・目的(3)①も社内全体で腹落ちしていないことも多いです。なので、ただ単に「女性管理職を今年度は2人増やそう」と言ったところで、男性だけでなく女性もモヤモヤしてしまいます。
ということから、問題の本質を理解するための3つのポイントを紹介します。
<モヤモヤの罠に陥らないための3つのチェックポイント>
①言葉の定義は明確化?
②どんな問題解決にリソースを集中するか、具体的に判断できるか?
③解決策がアクションレベルで透けて見えるか?
このチェックポイントを満たす構造化ができているか? ズームイン(ある部分をフォーカスする)したりズームアウト(多角的、広い視野で見る)して考えられる問題をフレームワークで整理しながら掘り込んでいくと、解決策がなんとなく見えてくるものです。
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