健康経営｜他の経営課題の改善・解決へ　⑥SDGsとサステナブル経営

SDGsとは、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際的な目標であり、大企業だけでなく中小企業でもそれぞれの会社でできる取り組みを行っている会社が散見されるようになってきています。また、サステナブル経営とは、企業が様々なステークホルダーと共存を図りながら長期的かつ持続的に成長し続けることを目指すもので、SDGsと親和性が高いとされています。SDGsと健康経営は、企業とそこで働く従業員の持続的な成長・発展を目指すための基盤として「働きやすさ」「働きがい」の充実が重要とされるなど、大きな関連があると考えられます。

 

 

SDGsとは何か

SDGsは2015年9月の国連サミットで加盟国の全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指すための国際的な目標で、17の目標と169のターゲットから構成され、誰一人取り残さない社会の実現を目指すものです。17の目標は、貧困や飢餓、健康、教育、ジェンダー、環境、成長・雇用、平和など極めて多岐にわたり、その下に169のターゲット、231の指標が定められています。

 

SDGsの実現、持続可能な開発のためには、環境と経済、社会と言った複数要素に考慮しながら取り組むことが大切とされています。これらの取り組みの特徴を表わすものとして、日本政府では普遍性（すべての国が行動）、包摂性（誰一人取り残さない）、参画型（すべてのステークホルダーが取り組む）、統合性（社会・経済・環境に統合的に対応）、透明性（定期的なフォローアップ）を掲げて、SDGsアクションプランなどを通じ、それぞれのステークホルダーの行動目標を規定し、取り組みを推進しています。

 

では、SDGsと企業活動はどのように関連付けられるでしょうか？

 

SDGsでは「参画型」に代表されるように、幅広いステークホルダーの協働により取り組みを進めることが要請されています。特に、17の目標の中には産業界の協力なくしては達成できない項目が多くあるため、企業がSDGsに本腰を入れて取り組むか否かは非常に大きな意味を持ちます。また投資の視点と人材の視点から見ると、近年、ESG投資（環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視、選別して行う投資）が注目を集めるにつれ、投資家からの信頼を得る上でも、企業経営にあたっては、異常気象、資源等地球環境への対応、労働、人権、モチベーション等労働者への対応、企業の社会的意義を含めて対応する必要性がこれまで以上に高まっています。

 

また、自社の取り組みを通じて社会への貢献を果たすということは、そこで働く従業員のエンゲージメントを高める上でも有効です。その意味で、SDGsへの対応は優秀な人材を確保するためにも重要だと考えられます。

 

 

サステナブル経営へ

従来の株主資本主義に基づく経営と異なりサステナブル経営は、自社の活動目的を幅広く捉え、自社製品・サービスにより社会全体に価値を提供すると考えます。その場合、環境や資源が損なわれることやステークホルダーが窮乏化することなどは、自社の活動の長期的な発展の基盤を棄損することにもつながっていきます。逆に言えば、環境や社会、経済の持続可能性への配慮を経営に反映させ、必要な投資を行うことは、結果として事業のサステナビリティ（持続可能性）向上につながるという意味で、自社にとってもプラスとなり、同時に社会にとっても益になります。

 

	株主資本主義に基づく経営	サステナブル経営
経営の目的	株主利益の最大化	ビジネスを通じた社会への価値提供
時間軸	短期志向	長期・持続性志向
重視すべきもの	株主への貢献	全てのステークホルダーへの貢献
環境や人への投資	必要があれば払うべきコスト	自らにとってもステークホルダーにとっても必要な投資

 

 

健康経営との関連性

SDGsの特徴の１つとして「統合性」を有しており、社会・経済・環境に対応することを旨としています。このうち経済面＝企業統治に関連して、企業が持続的に成長していくためには従業員が健康でいきいきと働き続けることが重要である、という点において、SDGsへの取り組みが健康経営との結節点を持ちます。SDGsを経営戦略に落とし込んだサステナブル経営においても、重要な経営資源・資本として「人」を重視しており、人的資本への投資や人材戦略を中期経営戦略等に盛り込むことが望まれます。経営においても「人」に投資することが一種のトレンドになっており、従業員の健康課題への対尾言うは、SDGs全体の目標やサステナブルな企業経営を構成する一要素に過ぎないとはいえ、大きな関連があると捉えることができます。