心の健康問題|あなたは誤解していませんか?
2022/02/04
常時50人以上の労働者を使用する事業場に義務付けられているストレスチェック制度が施行されたのが2015年12月。心の病気の予防や早期発見のために行なわれるようになったものの、それは適切に運用されているでしょうか。
ストレスチェックに引っかかったら働かせてもらえなくなるのではないかとか、心の病気を持った要注意人物と見られるのではないかなど、メンタルヘルスを扱うことがネガティブに捉えられすぎて、心の健康問題に対する偏見や誤解がまだまだあるような気がしてなりません。
- ○ メンタルヘルスは特殊な人の問題であるという誤解
- ○ 経営上はあまり関係がないだろうという誤解
- ○ メンタルヘルス不全は個人の問題であるという誤解
- ○ メンタルヘルス不全に関するその他の誤解
- ・メンタルヘルス不全は治らないという誤解
- ・メンタルヘルス不全者などの精神障害者は危険であるという誤解
- ・メンタルヘルス不全は遺伝性疾患であるという誤解
メンタルヘルスは特殊な人の問題であるという誤解
メンタルヘルス不全は気合が足りなかったり心の弱い人の問題である、という考えをとる立場がありますが、実際はそうではありません。
心の病の中で最も多い「うつ病」の有病率は2~3%であり、例えば1,000人規模の事業所であれば、20~30名がうつ病に罹患していても不思議ではなく、決して珍しい病気ではありません。
メンタルヘルス不全においても、高血圧や胃潰瘍などの身体疾患と同様に個人的要因の関与もあるでしょうが、予め将来的にそうなりうる人(そういう素因を持った人)を採用や昇進の際にスクリーニングすることが現実に可能かといえば答えはノーです。それは高血圧や胃潰瘍において予測困難であるのと同様です。
予測困難といえる理由にはその他にも2つあります。
1つは、うつ病と親和性の高い病前性格に「自分自身に対する以上に周囲に配慮する」「物事の手順や秩序を重視する」というものがあります。これは組織人という観点で見れば、高い順応性とパフォーマンスの源となりうることです。
もう1つは、過労自殺と認定された人の多くが直前まで「仕事ができる人」と評価されており、その7割以上が治療を受けていない従業員であったことです。
つまり、すべての人がメンタルヘルス不全になる可能性があるということです。このため特定個人へのアプローチや選別という発想ではなく、むしろ職場環境、とくにコミュニケーションの改善や上司が部下の健康管理に配慮し、メンタルヘルス不全を個人の問題ではなく、職場というシステムの問題と捉えることが自然です。
経営上はあまり関係がないだろうという誤解
企業の経営としてメンタルヘルス対策は講じても特段プラスにはならないと考える立場も稀に見受けられます。しかし、メンタルヘルス不全が職場に与える影響は、決して少ないものではありません。
ひとたび過労自殺や過労死が発生すれば周囲の従業員は動揺し、職場の士気低下につながります。また、損害賠償額も決して小さいものではありません。加えて、メンタルヘルスが不良な状態が続くことは、職域のモラル低下を招き、事故・ミスの発生と隠ぺいという非常に大きなリスクを企業サイドとして背負うことになりかねません。
同時に、メンタルヘルス不全による労働力損失等も決して小さいものではなく、健全なストレスレベルであればいいパフォーマンスを発揮できますが、そうでなければ、病気・治療などによる欠勤(アブセンティーイズム)よりも不調の状態で出勤(プレゼンティーイズム)の方がコストがかかるといったデータもあります。
よってメンタルヘルスはただメンタルヘルス不調を出さないとう守りの健康経営だけでなく、心身共に能力を最大限発揮できる環境を作り出すという攻めの健康経営と両面セットで考えることが真の健康経営でありメンタルヘルス対策といえます。
メンタルヘルス不全は個人の問題であるという誤解
従来はメンタルヘルス不全に関しては、個人の問題と捉えられる傾向が確かにありました。例えば、自殺は自損行為とされ労災の業務上認定とはなかなかなりませんでしたし、うつ病なども内因性(個人的な脳の機能異常に原因を帰す考え方)の精神障害とされ、やはり労災認定から基本的に外されていた時代がありました。
しかし、現在ではメンタルヘルス不全者や自殺者は一定の要件を満たせば労災認定の対象とされる傾向が顕著であり、業務と何らかの関連が認められるメンタルヘルス不全の事例については、事業者の管理責任が問われるようになりました。
同じ上司の下、同じような失敗をし、同じような指導を受けたとしても、部下によっては全くダメージを受けない人もいれば、それが心の傷となり自信喪失に陥る人もいるでしょう。個人のストレス耐性や経験、性格、その上司との関係性などいろんな要素によって違いが出てくるものですが、それでもそうなった原因として会社側に問題があると捉えて対応、改善していくことが望ましいです。
メンタルヘルス不全に関するその他の誤解
メンタルヘルス不全は治らないという誤解
メンタルヘルス不全は高血圧症や糖尿病と同様、慢性疾患としての側面がありますが、誰でもかかる可能性のある病気であり、決して不治の病ではありません。
例えば、統合失調症については、WHO健康報告にも「統合失調症は様々な経過をたどるが約3分の1は医学的にも社会的にも完全に回復する。初発患者の場合、早期に進歩した薬物療法と心理的ケアを受ければ約半数は長期にわたる完全な回復を期待できる」と明記されています。うつ病については、これ以上の治療効果が期待できます。
メンタルヘルス不全者などの精神障害者は危険であるという誤解
一部マスコミの不正確な事件報道等を介してメンタルヘルス不全などの精神障害者は危険であるという漠然とした残念な誤解もあるようです。
しかし、犯罪白書によると、刑法犯の全検挙者に対して精神障害者が占める比率はわずか0.6%に過ぎません。これを見る限り、精神障碍者を危険視する認識が誤解であることがわかります。
メンタルヘルス不全は遺伝性疾患であるという誤解
メンタルヘルス不全は、その人の病気へのなり易さ(発症脆弱性)とストレスを引き起こす環境要件が複雑に絡み合って起こるものです。これ『脆弱性ストレスモデル』といいます。子の発症脆弱性には、その人の素質のみならず、生まれてからの学習や経験などにより獲得されたストレスへの対応力が深く関連してくるため、遺伝のみでは説明できません。
メンタルヘルス不全は糖尿病や高血圧症などの生活習慣病と同様に、ライフスタイルを改善したりストレスをうまく処理することにより防ぎうるものです。そして、早期に発見し、適切な治療・サポートが行われ、ストレスを和らげる環境が職場や家庭で新たに提供されれば、長期的に症状は安定し従前と同様の社会生活を送ることが可能といえます。
このためにも、軽いうちにストレスを解消する工夫をしたり、生活を点検したりし、それでも解決できないときは早めに相談することが大切です。
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