高齢従業員特有の健康課題への対応
2021/07/02
すでに各企業で行われている定年引き上げや2025年4月から義務付けられる65歳定年制など高齢者の社員比率が年々高まっていきます。
今の高齢者は若々しいと言えども、フレイルをはじめとする高齢者ならではの健康課題というものがあります。健康経営を実践する企業であれば、フレイルとは何かを知り、予防の取り組みが必要です。
- ○ 高齢者特有の健康課題「フレイル」とは何か
- ・1.フレイルの構成要素
- ・2.聴力の低下
- ・3.糖尿病とフレイルの関係
- ・フレイルの基準
- ○ 職場における高齢従業員の健康課題への対応
- ・1.栄養
- ・2.体力
高齢者特有の健康課題「フレイル」とは何か
2014年5月に日本老年医学会から、Frailityの日本語訳として「フレイル」が提唱されました。
「フレイル」とは加齢とともに環境因子に対する脆弱性が高まった状態のことです。もともと「虚弱」と訳されていました。しかし、「フレイル」は、「虚弱」という言葉が与える印象と異なる概念を含んでします。それは、可逆性と予防についての考え方です。
すなわち、加齢に伴う身体機能の衰えは不可避的なものでも、適切な介入がなされることで、要介護に至ることが予防でき、健常な状態に戻る可逆性を有するというものです。
1.フレイルの構成要素
フレイルの構成要素としては、
・身体的フレイル/近年問題となってきたロコモティブシンドローム(運動器症候群)やサルコペニア(加齢性筋肉量減少症)
・精神・心理的フレイル/老人性うつや軽度認知障害(MCI)、初期の認知症
・社会的フレイル/社会的絆や友人・知人との交流が減ることによる孤独や閉じこもり
の3つが挙げられます。
これらの3要素は相互に強く関連していることから、フレイルの対策を検討する際は、いずれの要素も欠かせないものとなっています。
「ロコモティブシンドローム」とは
「ロコモ」と略されることもある 2007年日本整形外科学会が提案した概念で、運動器の障害によって移動機能の低下をきたした状態と定義されています。移動機能とは、歩行や立ったり座ったりするための上下肢や体幹の機能を意味しています。運動器を構成する骨、軟骨、筋肉等の組織が、加齢とともに量的・質的に減少するうちに、膝や腰の痛みが強くなったり、骨折が発生して進行するという経過をたどちます。しかし、ロコモを早期に発見すれば予防策を講じることができますし、ある程度進行しても、治療で回復する可能性がありますので、可逆性の段階でスクリーニングや判定を行って、改善策を実施する意義は大きいと言えます。
「サルコペニア」とは
高齢者で骨格筋が萎縮することで、サルコペニアの存在が健康寿命に大きく関連し、将来の身体機能障害、施設入所、生命予後悪化のリスクになることが明らかになっています。薬による予防、治療法は十分に確立していませんが、現時点で介入可能な戦略としては、栄養(十分なたんぱく質摂取)ならびに運動(レジスタンス運動)が効果的とのエビデンスが蓄積しつつあります。
2.聴力の低下
また認知機能を保ち、周囲とのコミュニケーションを図り、健康で知的な生活習慣を維持するためには、耳の健康にも留意すべきです。世界保健機関(WHO)では会話領域の平均聴力レベル26dB以上を難聴と定義しており、国立長寿医療研究センターの「廊下に関する長期縦断疫学研究」によると、この基準に基づく難聴の有病率は、男性では65~69歳で43.7%、70~74歳で51.1%、75~79歳で71.4%、80歳以上で84.3%であり、女性では年齢群順にそれぞれ27.7%、41.8%、67.3%、73.3%という結果でした。年齢による聴力の低下は、男性の方が女性より顕著ですが、いずれにしろ、老人性難聴は非常に有病率が高い慢性疾患と言えます。
老人性難聴は、、単に「音」に対する聴力が低下するだけではなく、「言葉」に対する聴力が低下するのが大きな特徴と言われています。つまり、アラームやクラクションなどの音に対する聴力低下は軽度でも、会話の聞き取り能力が大きく低下し、会話のスピードが速くなると、その傾向が強くなります。
「相手が何か言っているのはわかるけれども、何を言っているのかはわからない」という悩みを抱える人も多いことから、高齢者の難聴は、単純に音が聞こえないだけの問題ではないことを、周囲の人も理解することが求められます。
3.糖尿病とフレイルの関係
糖尿病患者はフレイルになりやすく、フレイルを合併すると死亡リスクが高まるという報告があります。逆に、フレイルがあると2型糖尿病の発症リスクが高まるとの報告もあるため、糖尿病とフレイルは相互に影響し合う可能性が示唆されています。
したがって、フレイル高齢者の糖尿病発症に注意するとともに、糖尿病のある人のフレイル対策として、運動療法、食事療法、薬物療法を的確に行うことが大切です。
フレイルの基準
フレイルの基準には、様々なものがあります。よく使われているFriedの基準は5項目あり、3項目以上該当するとフレイル、1または2項目だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。
・体重減少(意図しない年間4.5㎏または5%以上の体重減少)
・疲れやすい(何をするのも面倒だと週に3~4日以上感じる)
・歩行速度の低下
・握力の低下
・身体活動量の低下
職場における高齢従業員の健康課題への対応
歳を重ねるにつれ、心身に様々な変化が起こるため、健康づくりの方法も年齢に合わせて変えていく必要があります。中年期までの健康づくりは、メタボリックシンドローム対策が中心で、食事をとりすぎないように注意する必要があります。しかし、高齢期になると反対に食べなくなる心配の方が大きくなってきます。メタボ対策からフレイル対策への切り替え時期については、「生活習慣病対策は65歳までとし、75歳以上はフレイル対策が必須。その中間は、患者の状態をよく知る医師が個別に判断するのがベスト」と考える専門家が多いようです。
このように高齢従業員の健康課題のたいおうについては、 ねんれいだけでなく、、その人その人の状態を知った上での個別の対応が求められますが、職場で振れ理宇予防に取り組む場合は、「栄養」と「体力」をキーワードに検討するとよいでしょう。
1.栄養
食が細くなると栄養不足に陥り、要介護や死亡のリスクが高まります。フレイルを防ぎ健康長寿を目指すには、1日3食、下記の10品目をまんべんなく食べることが大切です。
・卵
・海藻
・緑黄色野菜
・いも
・果物
・油脂
・牛乳や乳製品
・大豆や大豆製品
・肉類
・魚介類
特に肉・魚・卵・牛乳などのたんぱく質をしっかりととる必要があります。タンパク質は筋肉を強くし、病気やけがに対する抵抗力を高めてくれる健康維持に不可欠な栄養素です。
1日に必要なたんぱく質量の目安は、体重1㎏当たり1.0~1.2gで、低栄養のおそれがある高齢者の場合は、体重1㎏当たり1.2~1.5gと言われています。
<体重50㎏のたんぱく質量の目安>
下記の食品を全部食べると、たんぱく質量が合わせて53gになります。
・豚ロース肉(焼き)50g→約13g
・焼き鮭70g→約20g
・牛乳180g→約6g
・卵50g→約6g
・納豆50g→約8g
2.体力
栄養摂取とともに大切なのか、体力の維持と転倒防止です。厚生労働省「平成29年度安全衛生優良企業公表制度周知啓発事業」のもとで取りまとめられた「企業における従業員の健康保持増進等に配慮した職場づくりのための取組事例集」(2018年3月)には、高齢従業員の活躍促進のための安全衛生対策を打ち出した企業の事例が紹介されています。
<高年齢労働者に配慮した職場づくりについての具体的な取り組み>
1)身体機能のセルフチェック
・歩行能力と筋力
・敏捷性
・動的バランス
・静的バランス(閉眼・開眼)
・身体機能計測
2)転倒予防体操
健康保険組合と中央労働災害防止協会が協力して開発した体操
①就業前の基本運動(スクワット、腕振りつま先上げ)
②筋力・敏捷性アップ(レッグラン時、その場足踏み、クロストレーニング)
③バランスアップ(脚の横上げ、つま先立ち運動)
等の13の体操から構成
3)正しいラジオ体操
毎日10分間実施
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