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定期健診後の保健指導は会社の健康づくりの基本

定期健診後の保健指導は会社の健康づくりの基本

2020/07/31


定期健康診断の実施に留まらず全従業員が受診することが、健康経営を取り組んでいくにあたって必要不可欠です。

そこで今回はその健診受診後、取るべき対応や措置についてまとめました。

従業員の健康管理と生活習慣病の重症化予防を進めるには、従業員に対して健康指導を行っていくのと同時に、健康診断の結果を会社が医療保険者(協会けんぽ又は健康保険組合)に情報提供し、互いに協力し合って取り組んでいくことが求められます。

労働安全衛生法に基づく定期健康診断・保健指導

労働安全衛生法に基づく定期健康診断は、常時使用する労働者に対して、その健康状態を把握し、労働時間の短縮、作業転換等の事後措置を行い、脳・心臓疾患の発症の防止、生活習慣病等の増悪防止を図ることなどを目的として事業者により実施されています。

労働者にとって多くの生活習慣病は、その職業生活に深くかかわっている作業関連疾患でもあります。例えば、タクシーの運転手の場合は夜勤などの不規則な生活に加えて、タクシーに乗りっぱなしのため腰痛・肩こりや運動不足になりがちです。それによってメタボリックシンドロームになるリスクが高まります。

このように業務・作業に関連して、生活習慣病が発生、増悪する可能性が高い場合、各職場において何らかの措置を講じる必要があります。

労働者に対する健康管理は、健康診断項目を充実させるだけでなく、その結果を踏まえ、労働者が健康に働けるよう必要な措置を講じ、健康診断結果を確実にフォローしていくことが重要です。

健康診断の事後措置

企業側は健康診断の事後措置として、医師等の意見を勘案し、必要に応じて就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、適切な措置を講じなくてはなりません。

また、保健指導や健康相談を利用し、従業員の実情を考慮しつつ、その健康の保持増進に努めなくてはなりません。

このように企業は、従業員の健康問題について、個人レベルの問題と捉えるのではなく、職業生活とのかかわりを考慮し、会社の問題として対処していくことが求められます。

<労働者50人未満の事業場(産業医の選任義務なし)の場合>
独立行政法人 労働者安全健康機構が以下の支援を行っていますので、必要に応じてこのような社外資源を活用することも有益です。

・地域産業保健センターによる保健指導などの産業保健サービスの提供
・小規模事業場産業医活動助成金制度
 (産業医や保健師と契約して産業医・保健師活動を実施した場合、助成金が受けられる)

特定健康診査・特定保健指導制度

近年の研究から、内臓脂肪の蓄積により、糖尿病等の生活習慣病の発症リスクが高まることが明らかになっています。

内臓脂肪の蓄積を第一条件とし、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病が重なっている状態のことをメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と言い、この状態が続くと、心臓病や脳卒中といった虚血性心疾患、脳血管疾患等の病気を引き起こす危険性が高くなります。

高齢化、ライフスタイルの変化などに伴い、国による各種の対策が行われているにも関わらず、生活習慣病は増加し続けています。

このような現状を踏まえ、2008年4月から「高齢者の医療の確保に関する法律」により、医療保険者に対して、内臓脂肪の蓄積等に着目した生活習慣病に関する健康診査(特定健診)、及び特定健診の結果により健康の保持に努める必要がある者に対する保険指導(特定保健指導)の実施が義務付けられました。

特定健診の対象者は、40歳以上75歳未満の公的医療保険加入者(被保険者・被扶養者)です。

特定健診の基本的は項目は、企業側による健康診断の項目と概ね一致していることと、労働安全衛生法に基づく健診の実施が特定健診よりも優先されるため、健保が加入者の定期健康診断の受診を確認することにより、特定健診の全部または一部を行ったものと見なされます。

リスク別の保健指導の実施

健保は、法律に基づき、特定健診・特定保健指導を実施、その結果を国に報告することが義務付けられています。

特定保健指導の対象者は、特定健診の結果から、内臓脂肪蓄積の程度(腹囲が男性85㎝以上、女性90㎝以上もしくはBMI25以上)とリスク要因(血糖・脂質・血圧)の数に着目し、リスクの高さに応じてレベル別(動機づけ支援・積極的支援)に選定されます。

選定された対象者には、医師や保健師・管理栄養士等の保健指導に関する専門的知識と技術を有する専門職が個別に介入します。

介入にあたっては、単に生活習慣改善のための知識や技法を提供するのみならず、労働生活を含む生活習慣をアセスメントし、対象者が自らの生活習慣上の問題点に気づき、その解決のために必要な行動変容が行えるよう、実現可能な目標を設定するための支援を行います。

<特定健診・特定保健指導の流れ>
特定健診
 ↓
健診結果の情報提供/保健指導対象者の選定/医療機関への受診勧奨
 ↓
特定保健指導
・初回面接
・3ヶ月以上の積極的支援または動機づけ支援
・実績評価
 ↓
国に報告

<特定健診・特定保健指導の実施状況>
特定健診の受診者は、制度導入時(2008年度)の2,000万人から毎年増加し、2015年度には約2,700万人(平均実施率50.1%)となっています。

一方、特定保健指導の実施率は17%台と低迷が続いており、課題となっています。

特定保健指導の円滑な実施

前述の通り、特定保健指導の実質が低迷する背景の1つとして、従業員の関心の低さや職場離脱が難しい点があります。

しかし、実施率の高い職場では、
・終業時間内の実施
・所属長経由で対象者への案内
・生活習慣病や特定健診・特定保健指導に関する情報の掲示
など会社さらに各部署との連携・協力が得られています。

健康経営優良法人の認定基準でも「特定健診・特定保健指導の実施」は必須項目となっており、重要な取り組みの1つと言えます。

企業側からの健保へのデータ提供

特定健診・特定保健指導の導入によって保険者および事業者は、コラボヘルスの考え方に基づいて連携・協力しながら、加入者(労働者)の健康増進を積極的に推進していくことがますます重要となってきています。

コラボヘルスとは、事業者(企業)と保険者(健保)が積極的に協力し合い、労働者やその家族の健康増進を効果的および効率的に行うことです。

法律上、健保は労働安全衛生法に基づく企業の健診結果を特定健診の結果として利用することが可能です。また企業側が健康診断のデータを健保に提供することにより、必要に応じて特定保健指導を無料で受けることができます。

さらに、健保から健康診断に関する記録の写しの提供を求められた企業は、その記録の写しを提供しなければならないことも法律に定められています。

健康経営優良法人の認定基準では、企業に対して健康経営の実践を促す観点から、40歳以上の健診データを提供することが必須項目となっています。

健康経営に取り組む企業は、健保からのアプローチを待つだけでなく、能動的に働きかけていくことで実効性のある体制づくりが可能になります。加入している健保のホームページにデータの提供方法に関する情報などが公開されています。

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